再就職手当は、
もっと時間がかかるものだと思っていた。
だからこそ、
あの日の知らせは、
静かに、でも確かに胸にしみた。
再就職初日、迷いながら書類を託した
再就職初日。
派遣会社の担当者に、再就職手当の書類を渡した。
記入してもらう用紙が2枚と、
日付の訂正が必要な採用証明書。
初日からお願いするのは正直気が引けた。
それでも、
手続きを止めたくなくて、
思い切って手渡した。
戻らない書類と、静かな不安
派遣会社は派遣先から遠く、
担当者も忙しかった。
いつ戻ってくるのか分からないまま、
数日が過ぎていった。
ポストを開けるたび、
胸の奥が、ほんの少しざわつく。
スマホを見る癖が増えた。
騒ぐほどではない、
でも確かにある小さな不安ほど、
心の奥に残るものだと知った。
10月3日、「今日持って行きますね」の連絡
10月3日の朝。
担当者から連絡が入った。
「今日、持って行きますね」
それだけの言葉なのに、
肩の力が、すっと抜けた。
夕方には、
わざわざ待っていてくれて、
書類を手渡してくれた。
そのさりげない気遣いが、
思っていた以上に、温かく感じられた。
封筒と過ごした週末
その日は金曜日だった。
近くに、
土日に開いている郵便局はなかった。
机の上に置いた封筒を、
何度か確認しながら過ごした週末。
大げさではないけれど、
それが今の自分にとって
とても大切なものだと感じていた。
6日の月曜日、簡易書留で送付
10月6日、月曜日。
昼休憩に郵便局へ向かい、
簡易書留で送付した。
追跡番号を確認すると、
翌朝には届いていた。
ここまで、
自分にできることはすべて終えた。
「1か月ほどかかります」と言われた時間
ハローワークでは、
「審査には1か月ほどかかります」と説明されていた。
派遣での再就職ということもあり、
本当に振り込まれるのか、
心のどこかで不安は残っていた。
それでも、
働きながら待つしかなかった。
17日、思いがけない知らせ
10月17日の昼休憩。
いつものようにスマホを開くと、
ゆうちょ銀行のアプリに通知があった。
「入金のお知らせ」
残高を確認すると、
再就職手当の金額が表示されていた。
審査から、
まだ10日ほどしか経っていない。
驚きより先に、
静かな安堵が、胸いっぱいに広がった。
目に見える数字よりも、
張りつめていたものが
ふっとほどけていく感覚のほうが大きかった。
20日、大きな封筒が届いた
10月20日、月曜日。
ポストに、大きな封筒が入っていた。
ハローワークからの通知と、
就業促進定着手当 の申請書類。
書類を確認しながら、
ようやく実感が追いついてきた。
「あぁ、ちゃんと認められたんだ」
静かに、
胸が温かくなった。
おわりに
あの日、届けられたのは、
お金だけではなかった。
不安の中でも前に進んだ時間が、
確かに報われたという実感だった。
ようやく私は、
過去に戻らずに進める場所に
立てたのだと思えた。
▶次の第20話は、
