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工場見学と、あっという間の採用

思いがけず訪れた“工場見学”というチャンス。
不安と緊張を抱えながら向かったこの日が、
まさか人生の大きな転機になるなんて――。

再出発へつながる“小さな奇跡”の物語。


目次

突然の連絡と、工場見学への誘い

9月16日。
いつもより静かな昼下がり、携帯が鳴った。

派遣会社の担当者からだった。

「働きたいとおっしゃっていた工場に行く予定ができたので、
先に工場見学を済ませておきましょう」

突然の提案。
でも、胸の奥がふっと温かくなるのを感じた。

――チャンスだ。

そう思い、工場見学に行くことを決めた。

工場近くのコンビニで待ち合わせをし、少しだけ打ち合わせをしたときのこと。

「緊張してます?」

と聞かれ、「してます」と素直に答えた私に、

「この前と顔が違いますよ」

と優しく言われた。

自分では気づいていなかったけれど、
そんなに表情に出ていたのかと思うと、少し恥ずかしく、そして少し嬉しかった。


あっという間に終わった工場見学

担当者の車に先導してもらいながら、工場へ向かう。
胸の奥の緊張は、車の揺れに合わせて小さく波打っていた。

ただ、実際の工場見学は想像していたものとは違っていた。

作業場の中に入るわけではなく、
小さな窓からそっと覗くだけ。

ちょうど区切れ目の時間だったようで、
作業場は静かで落ち着いた空気に包まれていた。

そのあと通された会議室では、
派遣先の工場の方からいくつか質問があった。

健康状態のこと。
前職のこと。
いつ頃から働けるのか。

面接という堅さはなく、
担当者が隣でやわらかくフォローしてくれる、安心した空気が流れていた。

前職も工場勤務だったことを伝えると、

「いいよ」

と一言。

その瞬間、
胸の奥で小さく何かがほどけた。

――もしかしたら、本当に進めるのかもしれない。

そう思えた。

わずか17分で決まった採用

外に出て空を見上げ、時計を見ると16時17分。

工場見学が始まったのは16時。
ほんの 17分 で、すべてが終わったことになる。

担当者は笑いながら、

「今までで1番最短でした」

と言った。

私はまだ信じられなくて、

「決まったんですか?」

と恐る恐る聞いた。

すると担当者は、
まるで自分のことのように嬉しそうに、

「はい、決まりました」

と言ってくれた。

そのあと続けて、

「制服のサイズを教えてください」

と言われた瞬間、
胸の奥にふわっと熱いものが広がった。

――採用されたんだ。

その事実が、静かに、でも確かに心に沁みていった。

最後に担当者から、

「それでは18日にお待ちしております」

と言われ、工場の前で別れた。

歩きながら、思わず空を見上げた。
光が、少し違って見えた。


小さな自信が戻ってきた日

まさか、こんなにスムーズに決まるなんて。
9月11日のこの出来事は、私の中に大きな安心を運んできてくれた。

そして同時に、

“ちゃんと前に進んでいる”

その感覚が、心の真ん中にそっと戻ってきた。

ほんの少しだけ、
自分を信じられるようになった――。

そんな、大切な一日だった。


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